ロシアとウクライナが停戦交渉に入るというのに、未だにウクライナ国内では武力によるロシア軍の制圧とウクライナ軍の防衛が続いています。
新たな関連報道を見聞きするたびに悲しく、胸が苦しくなります。
ここ数日、今の自分にできることは何だろうかと考えていました。
私は自分の意思で母国を去り、好きな人と家族として一緒にいるために異国に来ました。
しかし、今ウクライナから退避してきている人たちは違います。家族、夫や息子を残して祖国を去る。
彼らの気持ちをどんなに慮っても、到底全てを理解するのは難しいでしょう。
国境まで食料を寄付
微力ながら、物資を国境(Vyšné Nemecké)まで届けてきました。国境近くの住んでいる身だからこそ、今必要な手助けを直接したいと思いました。
現地では非営利団体による炊きだしや寄付された物資の配布、宿泊施設への登録と送迎が行われていました。

寄付第二弾。炊き出しを提供するためのスプーンと器が足りないとのことだったので、追加のお菓子とともに

物資は現在比較的足りているそうですが、パンや果物、飲料に日用品等、必要最低限の品物のみ。お菓子などの嗜好品はほとんどありません。


国境を越えてくる多くは幼い子供を連れた母親です。心身共に疲労が溜まっているでしょう。
私たちはチョコレートやクッキーなどのお菓子を多めに用意して持っていきました。
持参した食料を手渡せて、小さな声でありがとうと言われたときは今日ここに来ると決めて本当に良かったと胸がキュッとするような感覚がありました。
元々、スロバキアにはウクライナから多くの出稼ぎ労働者がいます。
(スロバキアのみならず、EU加盟国に)
実際に国境付近にはヨーロッパ各国のナンバーの車が停まっていました。
今のところ、スロバキアに入国してきた人々はヨーロッパ各国在住の親族や知人のところに身を寄せる人たちが多いようです。
路上で誰かを待っているような家族何組かに声をかけましたが、チェコのプラハやスロバキアの首都ブラチスラバから車で迎えに来る父親を待っているとの返答でした。
(主人がスロバキア語で聞いても何とかウクライナの人とは会話ができる程度にウクライナ語は似ています)
もちろん身寄りがなくスロバキアに退避してくる人たちもいますので、国境近くの村や街の役所や学校の体育館が避難所となっています。また、国境から政府が用意した宿泊施設にバスで輸送も行っています。

中には自身のアパートの空いている一室を退避してきたウクライナの人たちに提供しますと情報を拡散している一般のスロバキア市民もいます。
私たちも何か助けが必要なら連絡を、と本部のテントで連絡先を渡してきました。
難民とは?状況を利用する者
退避してくる人たちの対応に当たっている人に話を聞くと、最初の3日はウクライナ人のみがスロバキアに入国していたのですが、今日は朝からモロッコ人の学生集団?が入国して宿泊登録をするでもなく、バスに乗るでもなく、炊きだしを食べては寄付された物資を非常識なほどに大量に袋に入れていたのだそう。
私たちが物資の集まるところでチョコレートを並べていたら、ここでは本当に必要としている人たち届かないからと、国境警察官に国境近くまで案内してもらいました。
正直、状況は混沌としており、目の前のことに対応するのが精一杯です。
もし本当にこの状況を逆手にとってヨーロッパに来るためにスロバキアに入国して、スロバキア人の善意を利用しているなら、本当に許せません。
有事のどさくさに紛れてこのような人々がヨーロッパに流れてきているのも現状のようです。
ウクライナからスロバキアに入国してしまえば、スロバキアはシェンゲン圏内ですからヨーロッパのシェンゲン協定に加盟している国へはパスポートチェックなしで往来できてしまいます。
人の道を生きる
悲しい過去ですが、30年前のユーゴスラビア紛争の際、現在のセルビアから多くの人々が難民として国を追われました。その当時もスロバキアは退避してきた数十万人のセルビアの人たちを迎え入れたそうです。
数年後、状況が落ち着くにつれ全てのセルビア人は故郷に帰ったそうです。
現在のウクライナの国土は第二次世界大戦後に拡大したものです。
それまでは東側のドニエプル川辺りまではロシア、北西部はポーランド、南西部はチェコスロバキアでした。
国家とはなんでしょうか?
国境という枠を外すと同じ地域に生きる同じ人間だという根本があるのに、政治の利権を巡り蔑ろにされるのです。
賢く、冷静に
ヨーロッパ各国を始め、国の先頭に立つ人たちが感情的になっているのが気がかりです。
気持ちは分かりますが、今は冷静になることが大切ではないでしょうか。
有事だから何をしても良いとは思いません。どうか慎重に判断していただきたいものです。
ただ武力での争いが長引けばそれだけ犠牲者が増えるということ。
一刻も早く互いに武器を置いて、ロシアとウクライナ双方が譲歩して歩む道を見い出してほしい。
そして愚かな過ちは終わりにするべき。人命を奪ってまで手に入れるべきものなんて存在しないのだから。